CSH01

床と床のあいだ、壁と壁のあいだ

 

名古屋市千種区に建つSOHO(住宅兼オフィス)の計画である。3棟の戸建賃貸住宅の一棟として計画され、住み手を想定することで特別にSOHOとして設計された計画である。20坪程度の小さな土地に道路斜線や20m高度地区の斜線制限がかかる厳しい敷地条件だが、伸びやかなひろがりのある空間を作りたい、と考えた。

斜線制限を考慮して三つの塔状の縦長ボリュームを設定し、両脇の塔に対して真ん中の塔が最も高い配置とした。各ボリュームはそれぞれ2-3の床面があり、全体としては8つの床レベルがある。それらの床がスキップフロア状にレベル差を持ち、壁の少ない広がり感のある空間を目指している。しかし、ただ単にガランとした一室空間というのではなく、住居部分とオフィス部分の区分けなどが無理なくできるような仕掛けも必要だった。

 住居部とオフィス部は、部屋そのものが半階ずれており、ズレ部分はそのまま開口部になっている。開口部はあえて建具は設けず、それぞれの様子を垣間みることができる。

住宅部分でも階段室周りは、構造に必要な壁も含めて幅の小さい短冊状の壁とした。短冊壁の隙間からさまざまなアクテビティが垣間見える。

 また、階段室は壁に外壁が設えられ、屋根も屋根らしいものはなくガラス一枚だ。そもそも階段室は部屋と部屋の間にあるものだからだが、外部のように感じられることで、狭い敷地でもいっそうのひろがりを感じられるようにするためでもある。

そして、抜けの良さは視線だけでなく風や熱にとっても同じである。全体を縦に繋げる階段室は、窯の煙突のように熱環境をコントロールする上で重要な役目を担う。大きな天窓を通して住居内に暖かい空気を取り込む。対照的に、西のボリュームは半地下になっており、地中の安定した熱(特に冷気)を取り入れている。

冬場にトップライトから暖をとり、夏場は半地下から地中の冷気をとり、それらの熱の循環がスキップフロアによって実現している。

多くの場合、床のズレや短冊壁の隙間は空間の広がりや抜けを生み出す。このCmSoHoでは、熱環境や異種用途をコントロールする装置にもなった。しかしただそれだけでなく、もっと様々なことを喚起させる「ズレや隙間」を考えて行きたいと常々考えている。(吉村昭範+吉村真基)

 

所  在  地|愛知県名古屋市
主要用途|住宅

設計監理|吉村昭範、吉村真基
構造設計|萬田隆/萬田隆構造設計事務所

施  工|アーキッシュギャラリー

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